◆平成23年度第2回復旦大学・関西大学経済フォーラムその1

2011年12月3日(土)

平成23年度
第2回 関西大学3研究所(東西学術研究所、経済・政治研究所、法学研究所)合同シンポジウム 

第2回複旦大学・関西大学経済フォーラム
「東アジアにおける持続可能な新たな社会をめざして」
と題して2011年12月3日(土)午前10時~午後5時まで関西大学千里山キャンパス尚文館1階マルチメデイアAV大教室で開催され聴講してきました。

会は定刻、水野一郎氏(関西大学経済・政治研究所所長)の総合司会で進められた。
関西大学長 楠見晴重氏から代表挨拶があり、
①今回の合同シンポジウムから新しい可能性が生まれること
②今後この会が3回、4回と続けていって欲しい
③先月、地球の人口が70億人(、1910年、人口は16億人)を超えたことはアジア地域の人口増によるものである。
④21世紀は環境問題を抜きにして語れない時代に入ってきており地球環境について充分考えていかなければならない。
今回のフォーラムから有意義な結果が生まれることを期待したい旨述べられた。

また、復旦大学日本研究センター 郭 定平氏から代表挨拶があり、
①合同シンポジウムが開催されることを心から歓迎したい。
②復旦大学の中に関西大学の上海事務所が開設されたことを感謝したい。
③中国は高度成長した中で、政府は環境問題に力を入れて取り組んできている。
④日本は昭和40年代の高度成長時代から環境問題に取り組んでおり、改善、保全においても世界でも優秀な環境ビジネスが進んでいる。

日本が3・11の大震災によって、持続可能な新たな社会をめざして、大成功をされることをお祈りしたい旨の挨拶があった。

講演①「持続可能な社会を目指す上海市の取り組み」復旦大学日本研究センター副所長・副教授 張 浩川(ちょうこうせん)氏から始まった。
主たる内容は
1.持続可能な発展とは 
2.持続可能な発展の推進 
3.持続可能な発展における上海市の取り組み 
4.ケース・スタデイー と題して講演された。

1.については、中国における定義、いわゆる持続可能な発展とは、目先の発展の需要を考慮しながら、未来の発展の需要も考慮し、後世の人々の利益の犠牲を代償に現代人の利益を満たしてはいけない。
(江沢民) 自然エネルギー・環境の保護を基礎に、経済発展の促進を条件に、人類の生活水準の改善と向上を目標とする理論と戦略である。(「小康社会を全面的に構築する」、2002)
(1)発展を中心に
(2)発展の持続可能性
(3)人と人との公平性
(4)人と自然との共生

2.については
☆経済発展 ☆社会発展 ☆資源保護
☆生態保護 ☆環境保護 ☆能力建設 
の6項目について述べられた。

3.持続可能な発展における上海市の取り組み
(1)上海市の経済発展戦略と都市機能の位置づけ
(2)上海市における持続可能な発展の指導
(3)上海市が打ち出した持続可能な発展に関する政策
(4)上海市における主な実績
(①「循環経済型」ゴミ処理場・焼却、バイオ②風力発電所の設置③家庭ごみの減量、分類処理④リサイクル教育機材、設備(デスク、ラケット等)⑤グリーン交通(総距離400キロ以上の地下鉄)⑥新エネルギー車への試み

4.ケース・スタデイー
(1)上海老港生活ゴミ衛星埋立地の実施前と実施後
(2)家庭ごみの減量、分類処理
①市内18の街・鎮 コミュニテイー約100箇所 ゴミ減量・分別のモデル地区とする
②無公害化ゴミ処理能力、毎日1万250トン。実際に発生する生活ゴミ毎日1万9450トン、処理能力を大幅に超過
(3)ゴミの減量
①2010年をベースに毎年5%減少
②2015年までに市民一人当たりの平均ゴミ処理量を2010年比20%減少
③2020年までに50%減少
(4)ごみの分類
①団地で赤、黒、青、緑の4色の生活ゴミ収集箱を使用
②観光地等の公共場所で2種類のゴミ箱を設置(リサイクル可、その他)
③政府機関や学校、事業所等で3種類ゴミ箱を設置(リサイクル可、有害ゴミ、その他)分別回収は、生活ゴミの量を減少させ、資源化をはかるための有効な手段である。
(5)グリーン交通:
①現状・上海地下鉄が1995年4月10日に正式に運営され、既に11の路線が稼動され延べ総距離400キロを超え、世界一位である。
②政府の取り組み:上海市政府は終始エネルギーの節約と新エネルギー車を産業発展のキーポイントとして、新エネルギー車の開発を推進しつつある。
③上海嘉定区電気自動車国際模範区が既に運転体験、固定線路運営、試乗試運転体験を含む三方式での模範運転が行われている。上海初の電気マイカー使用にも推進する。関連措置等も整備されつつある。上海の実情に基づき、市政府はグリーン交通に有利になる条例を打ち出す。上海地下鉄運営会社をはじめとする地下鉄に関する企業は政策に従がい成長する。産官で協力しあい、政府と企業両方が協力するのが現状である。
発展前では環境汚染、交通不便、輸送力不足であったが、発展後はエネルギー節約、交通便利、輸送量余裕が出来た。
(6)新エネルギーの開発と応用―風力:2箇所の風力発電所の総容量は2万キロワットである。

最後に、張先生が、省エネ、バイオ、先端機械において今後36兆元、15兆円のマーケットが出現する、日系企業の進出が中日関係の可能性を秘めている(現在欧米の部品メーカーが殆んどである)産業界のかかわりをさらに深めていくことを期待したいと述べられたのが印象的であった。

(関西大学経済人クラブ 代表幹事 田合 邦臣)