◆平成23年度関西大学特別公開講座 その2

2012年2月25日(土)

平成23年度関西大学特別公開講座
(大同生命保険株式会社 寄付講座、http://www.daido-life.co.jp/

―その2―
「関西中小企業の活性化と経営革新セミナー」開催される。
平成24年2月25日(土)13:00~16:15
関西大学千里山キャンパス第4学舎3号館3401にて開催され、聴講してきました。

第1講は「世界に拡げる日本のモノづくり」と題して、シャープ株式会社 (http://www.sharp.co.jp )代表取締役会長 町田 勝彦 氏

第2講は「非常事態にも強い会社とは」~経営力と資金調達力を強くするために~と題してTKC全国会会員 税理士法人みなと元町会計事務所、(http://mm-kaikei.com )代表社員税理士 川上 哲司 氏が講演されました。


第1講の講演の主たる内容は
I.シャープの紹介
(1)2001年~2011年までの業績の推移
(2)創意のものづくりの歴史
(3)すべてのテレビを液晶に(・IC事業か?・液晶事業か?→液晶を選択・集中AQUOS)
 II. 厳しさを増す日本のモノづくり
(1)モノづくりの仕組みの変化(垂直統合・摺り合わせによるモノづくり・アナログ、熟練技術者によるモノづくり→水平分業・組み合わせによるモノづくり・デジタル、ソフトウエアーによるモノづくり)→簡単にモノづくりができるようになった。しかし。。。。・相次ぐ市場参入・商品の短命化・技術、ノウハウの流失→過当競争→日本が得意な摺り合わせ型モノづくりの崩壊

(2)日本の立地競争力の低下 
1.少子化(2004年ピーク)
2.円高(韓国のウオン安→韓国製品と65%の格差)
3.FTA/EPA遅れ(ポーランドに工場進出)
4.法人税 
5.規制強化(電力ソーラー50%→最近やっと75%)
6.電力制約→5重苦、6重苦
(3)産業空洞化の現状(日本に立地する合理的理由の消滅→海外からの積極的な誘致)
III.シャープのモノづくり
(1)成長し続ける新興国市場(急増するアジア新興国の富裕層・中間層、2010年→3.4億人、2015年→6.7億人、2020年→11.5億人・アジア新興国:中国・香港・台湾・インド・インドネシア・タイ・ベトナム・シンガポール・マレーシア・フィリピン。富裕層:35、000ドル以上、上位中間層:15、000ドル~35,000ドル未満 、下位中間層:5,000ドル~15,000ドル未満)
 
(2)シャープの事業構造改革
1.地産地消(上海、台湾、香港 :生産拠点6拠点・販売拠点5拠点・R&D拠点2拠点→全13拠点→中国統括会社の営業開始:北京市2011年10月Ⅰ日~)
2.バリューチエンの拡大(材料/ 装置/知財/ノウハウ/要素技術→商品企画/ 設計/ 調達/ 生産/ 物流→販売/ サービス/ ソリューション{←川上と連携、経営資源の配分:投資額の割りに収益性が低いモデル「付加価値」・収益性→川下と連携}2次産業+3次産業=5次産業化
川上から川下までバリューチエンの拡大、新たな垂直統合・摺り合わせモデルの開発:サービス・メンテナンス等。
 
3.新しい需要の創造(亀山工場:シャープの重点ビジネス領域、成長戦略小型:モバイル用:スマートフォン、タブレット端末、ゲーム、車載用←当社のオンリーワン技術:超高精細、低消費電力。堺工場:シャープの重点ビジネス領域、成長戦略大型:テレビ用、Non-テレビ用、大型サイズ←当社のオンリーワン技術:超大型パネル「G10」。
パソコン用、テレビ用普及サイズ←アライアンスによる外部調達活用
IV.これからの日本のモノづくり 
(1)日本に適したモノづくりのありかた(オンリーワンにこだわる)
(2)歴史に学ぶ、商品がヒットする3つの条件
1.世の中の流れをつかむ
2.お客様の目線に適う
3.技術力を活かす/ 磨く

第2講の主たる内容は4項目にわたり詳しく述べられた。
1.中小企業を取り巻く環境は?
(1)国税庁の発表によると。。。。「日本の企業の25%が黒字でした」⇒75%が赤字なら、うちも赤字で仕方ないか。⇒25%も黒字出しているのか。うちと何が違うのか。
 
(2)日本の人口は世界で何番目に、1950年5番目82、824千人2010年10番目 126、995千人 2050年 17番目 101,659千人
(3)少子高齢化が進んでおり。。。「50年後は2/3に減少」
(4)日本は世界2位の経済大国ではなくなった!?(GDPが43年ぶりに3位に転落し。。。
(5)中小企業の業況判断指数(DI)は。。。
(6)企業の倒産も増えてます・・・
(7)円高の影響は?・輸出産業に影響・新興国と競争激化・大企業の海外シフト⇒受注量減少、単価減少。脱下請、海外進出の必要⇒ほとんどの中小企業は対応できていない。簡単なまとめ・東日本大震災の影響⇒短期的には厳しい状況・人口減と少子高齢化⇒中長期的構造も厳しい・円高と海外との競争⇒取引構造的にも厳しい⇒中小企業自らが強くなるしかない!!

 
 *{強くなるってどういうこと?}
(1)経営力と資金調達力の強い会社に⇒PDCAサイクルを構築し、経営力と資金調達力を強化!
(2)経営力の強化とは・・会計を使って自社の毎月の経営状況をタイムリーに把握することから始めよう
(3)資金繰り計画表を作ってみてください。
(4)タイムリ-に経営状況が把握できない問題点とは?社内における問題点
1.経理担当者が多忙で業務に追われている2.社内のコミュニケーション不足で協力が得られない。社外における問題点1.取引先からの請求書が期日までに届かない
2.売上金額が相手側の検収を待たないと確定しない。
 #1社長から社内にタイムリーな業績管理の重要性を指示する。
 #2月次決算は正確性よりスピードを重視して処理を実施する。
(5)タイムリーに経営状況を把握するために・・・(売掛金、買掛金、在庫、原価償却、賞与引当金を発生主義計上し、月次決算することが重要です!
(6)中小企業の会計に関する基本要綱「中小企業のための新たな会計ルール」
・理解しやすく、自社の経営状況の把握に活用できる
・利害関係者(金融機関、取引先)への情報提供に使える
・税制との調和を図る
・作成負担を最小限に抑え、過剰な負担をかけない
―中小企業にとっても、会計の重要性が増していますー
(7)「中小企業の会計に関する指針」の適用に関するチェックリストを添付⇒保証協会の保証料率が下がる・日本政策金融公庫の金利が下がる
   ―信頼できる決算書には、金融機関は優遇を始めています。-
   -担保主義、保証主義から決算書重視に移行してきています。-
(8)決算書の信頼性をあげるために
   税理士法第33条の2に規定する書面の添付⇒税理士が納税者の申告書を作成する際に処理・計算した内容を書面に記載して税務署に提出する制度⇒
    ―良質な書面添付には「調査省略通知書」が通知されますー
(9)中小企業金融円滑法について(25年3月まで延長)
*厳しい経営環境のもと、借入れ条件の変更をもとめる企業が増加⇒金融円滑法が制定。⇒金融円滑法では経営改善計画の提出等により、返済猶予に柔軟に応じることを定めています。
 

(10)企業格付けとは(債権の分類)。。。。省略
(11)金融機関は貸出先の債権区分によって貸倒引当金を設定しないといけない!。。省略
(12)貸し出し先が要注意に分類されると。。。省略
(13)金融円滑法では、例えば企業からのリスケの要請に応じても、正常債権と見なしてもいいですよ、となっている。⇒ただし
1.実現可能性の高い抜本的な経営改善計画を1年以内に策定 
2.金融機関によるコンサル機能を充実させる。。などの条件付きです!!
まとめ
1.先ずは自社を取り巻く世の中の大きな流れを知る⇒国や行政の施策を理解する。⇒自社の対応策を考える。
2.経営者の仕事です!(・経営理念・ビジョン・経営戦略・経営計画・PDCA:計画・実行・検証・対策)⇒一貫性が必要 ⇒幹部・従業員を巻き込むのが大事です。
3.中小企業の業績の99%は社長の責任です。つまり・・・社長が変われば会社が変わる!!⇒社長は、常に明るく前向きに、大きな夢をもって、成功するまで行動し続けてください。

今回の講座を受講して:シャープの町田会長の講義は厳しい経済環境の中で如何に生き残るか、これからの目指すべき方向性を具体的に示されたと、同時に、私が51年前に大阪府立産業能率研究所での研修会で創業者の早川徳次氏から教育を受けたが、そのDNAが町田会長にひきつがれていることが驚きであった。今後の更なる発展を期待したい。税理士の川上さんの話はわかりやすく、経済人クラブの経営者の皆様は自社の会計を再度見直して欲しいと思った。

最後に、総合コウデイネイトされた関西大学名誉教授 大西 正曹 氏に心から御礼申し上げます。
                 (関西大学経済人クラブ 代表幹事 田合 邦臣)